中国の「ガラス橋」で見えた、ハード先行のつけ!?

中国の湖南省の渓谷に床全面がガラスでできた橋が完成した。
8月20日に完成したが、なんと9月2日で閉鎖になった。
理由が

「訪問客が多すぎる」

とのこと。せっかくできたばかりなのに、なんともお粗末な話である。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160903-35088489-cnn-int

実際に、8000人/日を想定していたところ、その10倍が押し寄せたというのですから。。。

湖南省のガラス橋

さてこの橋について少し検証してみます。

430メートルの橋を往復して860メートル。
休憩することなしに往復するとして人間の歩行速度は毎時4キロ。
断崖絶壁にかかったガラス橋ともなれば、4キロで歩き続けるのは不可能に近いでしょうからここでは時速1キロから1キロずつ速度を増やして検証してみます。
860メートルを、以下の速度で歩いた場合の所要時間と回転率(60分÷所要時間)は

時速1キロ → 51.6分 → 1.16
時速2キロ → 25.8分 → 2.33
時速3キロ → 17.2分 → 3.49
時速4キロ → 12.9分 → 4.65

もし営業時間が1日8時間(9時~17時)と考えて、各時間とも均等にお客さんが来てくれると(運営側にとっては夢のような)想定をしても、8000人を捌くのであれば1時間当たり1000人(8000人÷8時間)。全員がわき目も降らずまっすぐ同じ速度で進んでくれた場合、同時に橋の上にいる人の数は

時速1キロ → 860人
時速2キロ → 430人
時速3キロ → 287人
時速4キロ → 215人

実際には、時間帯によっては混雑もあるでしょう。その混雑がテーマパーク的な波動になるとすれば、8000人の50%が集中することにもなり、この場合は

時速1キロ → 3,440人
時速2キロ → 1,720人
時速3キロ → 1,147人
時速4キロ → 860人

橋を渡る際には、足がすくんで止まったり、写真を撮ったり、折り返し点で休憩したりということも起こり得るので、実際には時速1キロの場合は4,000人以上が橋の上に同時に滞留することになります。

吊り橋自体は世界的にはサンフランシスコのつり橋や日本のベイブリッジのようにたくさんの車が乗っても大丈夫な強度で作れるでしょうから問題はないでしょう。
しかし、結局この施設が閉鎖されてしまった本当の原因は別のところにあるのでは?と私は見ています。そして、これは中国の集客施設全体でよくある問題でもあるのです。

まずは1日8000人が来る時点で、8000人を捌き切るサービス施設(駐車場、チケット売り場、待ち合わせ場所)などが必要です。テーマパーク並みに集中するのであれば最大で時間当たり4000人を捌くサービス施設が必要なわけです。そしてこれだけの人が来た場合に対応するスタッフも必要です。
中国はこうしたサービス施設が脆弱な場合が非常に多いのです。
目玉となる施設にすべての注ぎ込んで、それを受け入れる施設を目玉施設ほど真剣に考えない、このため目玉の施設にたどり着くまでに時間が必要以上にかかってしまうことが多々あります。

もう一つは、「ガラス張り」にする必要があったかどうかです。
この場所は中国でも有数の景勝地であり、橋の高さも長さもすでに世界一です。そこにガラス張りという機能を加える必要があったのかどうか?非常に疑問です。この機能を盛り込んだため、ヒールで来てしまった女性は靴を履き替える必要が出てしまいこの対応も加える必要が出てきてしまいました。

もし、サービス施設を十分に確保できない状態になりそうなことが検証されていれば、いわゆる「世界一高い、世界一長い吊り橋」で充分であったはず。物珍しさに北京のオリンピックスタジアム級の集客になってしまう機能は必要ないわけです。

どうしてもガラス張りの機能が欲しいならば、開業後の訪問者数を見ながら改良するための必要最小限の機能を盛り込んでそのうち「リニューアル」させることも検討すべきだったのではと思います。

こうした背景には施設を提案する業者が、施工業者とつながっている可能性も考えられます。物珍しさを煽って建設コストを上げることで儲かる業者です。サービス施設は物珍しさなどがない施設なので、建築業者はあまり儲からないのでこうした業者とつながっている提案業者は積極的な提案もしないし、積極的に検証することもありません。
また、物珍しい施設にできるだけお金をかけたいという気持ちが発注側(公共側)にあればサービス施設の提案も縮小されてしまいます。

そしてもう一ついわゆるハード先行の思想が日本に比べると非常に強いことが災いした可能性があります。
ハード先行というのは日本でも同じようにことがありますが、中国では公共投資が必要になる施設建設では、構想案がまとまったのちにすぐに設計図面を作成することが義務付けられています。しかも図面を作成するのは国家認定の設計院という施設の承認が必要(現実には、この設計院が図面を作る)。この図面に沿って開発しないと営業が許可されないという仕組みです。
この仕組みがなかった当時は、申請した構想は公共性のあるものだったが実際には全く違うものができたりすることが多かったそうで、いわば「約束した通りのものを作るため」にできたルールだそうです。しかし、このルールも弱点があって一度考えたプランが修正できない(修正のためには大きなコストがかかる)ということです。このため、その後発見された弱点に関しては無防備な施設ができてしまう訳です。

今回の橋の場合も、ハード先行型の提案とハード先行に陥りやすい計画の仕組みが招いた悲劇と言えるでしょう。
こうした悲劇を未然に防ぐためには、施設を作る前の構想段階から運営者や利用者側に立っての検証作業というのは非常に重要であり、場合によっては計画の物珍しさを縮小する勇気を持つことも大事なのだということをこの事件は教えてくれているような気がします。

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