ビジネスに孫子の兵法を応用する方法

自営で仕事をするようになってからこれまでにないほど企画書を書くことが多くなりました。幸運なことに企画書のほとんどは大変良い評価をいただき、なんとか独りで食べていく程度は稼げています。

こんな中で時々「失敗しない企画書の書き方を教えてほしい」とか「仕事術を教えてください」いう話を時々いただきます。日本でも中国でも同じ質問をされたことがありますが、正直言って自分でも極意はよくわかりません。ただいくつか資料作成時とプレゼン時に気を付けておくべきことはあります。

それは「孫子の兵法」を読んで気が付いたことで実践していることです。

最近は、ビジネスには孫子の兵法を活用しましょうと題した本が結構出回っていますが、読んでみてそれを実際のビジネスに当てはめるのは皆さん苦労しているようです(だから、本が売れるのかもしれませんが・・・)

自分が孫子の兵法を実践している(と個人的に思い込んでいるだけかもしれませんが・・)ところは2点あります。

まずは、
『孫子曰く、昔の善く戦う者は、先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。勝つ可からざるは己に在り、勝つ可きは敵に在り。故に善く戦う者は、能く勝つ可からざるを為すも、敵をして勝つ可からしむること能わず。故に曰く、勝は知る可くして、為す可からずと。』
長尾一洋さんの解釈(http://www.kazuhiro-nagao.com/suntzu/gunkei.html)では
「孫子は言う。昔から、戦いに巧みな者は、まず敵が自軍を攻撃しても勝てないようにしておいてから、敵が弱点を露呈し、自軍が攻撃すれば勝てるようになるのを待ち受けたものである。負けないようにすることは自分自身によってできることだが、自軍が敵に勝つかどうかは敵軍によって決まることである。したがって、どんなに戦いが巧みな者であっても、敵を勝たせない状態にすることはできても、敵を攻撃すれば勝てる状態にさせることはできない。そこで、勝利の方法を知ることと、実際に勝利を実現することとは別であるというのだ。」というくだり。
大事な点は“勝つためには自分が負けないようにすること”という点。
自分は以下のように解釈しています。

例えば、自分に何かしらの企画書のプレゼンを依頼した上司やクライアントがいたとしましょう。その人はきっと「○○日までに結果を報告して」と言ってくるはずです。
そこで、企画書を作成することになりますが、まずは提案相手が納得してくれるシーンを想像してみます。「ここが良かった」「これが知りたかった」など褒めてもらえるシーンを考えます。
次に、「良かった」「知りたかった」という点を導くためのロジックを考えてみます。現実に沿って考えてみて、その結論にたどり着けるのかを検証してみます。たどり着けた場合にはそのまま企画書作成へ進みますが、たどり着けない場合の方が多くあります。
依頼者は「Aのようにしてほしい」というのに対して、自分は「Aにはならない、BやCになる」という結果が出てしまったとき、これが問題です。

ここで、孫子の兵法の登場です。
まずは先方(依頼者)が自軍(自分)を攻撃しても勝てないようにする。
依頼者に自分の考えを打ち明けて、依頼者の意図通りいかない可能性があることを伝えます。
ここで依頼者の反応は二通りに分かれます。
1:素直に自分の意見を受け入れてBかCという結果を受け入れる
2:それでもAを捨てきれないからAになるように導くように依頼する

1の場合はそのまま企画書へGO。結果はAではないが依頼者は知っているので問題にならない。
2の場合は、Aという結果を導くロジックを考えますが、リスクとしてBやCになる。そのリスクの確率は少なくない。と結論付けます。

こうすれば、結果としてプレゼンは失敗しません。自分を攻撃してきたとしても負けることはありません。1の場合は敵が弱みを認めたので、こちらの勝ちです(笑)。2の場合プレゼン終了後に改めてAを捨ててBかCで考えるように念押しはします。一応コンサルタントなので正論は主張します。

この作戦を実施するにあたっては依頼者のロジックを凌ぐ論理性とスケジュール管理が重要です。
依頼者が求めるスケジュールよりも早く、企画書へ進むためのロジックを考える必要があるからです。期日になってから「AとBとCのどれにしましょうか?」では話になりません。
ロジックを考えるところをできるだけ早急に進めて、依頼者に「今作ってるんですが、ちょっと問題がありますね・・・」と持ち込む時間を作る。もしくは流れを確認する時間を作る。「負けないプレゼン」の秘策なのです。

2点目です。これは知っている人も多い「風林火山」の話。
風林火山とはどういう意味か?
「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」と書かれています。軍隊の進退について述べたものです。これはどのように活かすのか?

疾如風(其の疾きこと風の如く)
仕事には期日というものが必ず付いてきます。期日を守るのは当たり前ですが、依頼者が予想しない速度で依頼を完成させることです。速度が挙げられない場合には自分のできそうな時間よりも長めの期日を設定します(ちょっとずるい手法です)。大事なことは期日よりも早く仕上げたという事実を作ることです。

徐如林(其の徐(しず)かなること林の如く)
仕事には「雑音」が付き物です。本当にうるさい音もあれば、のみの誘い、愚痴・・・自分の心を乱すものが雑音です。こんな雑音が入っても「動じない精神力」を持つことです。頭に来ることがあっても冷静に仕事だからと割り切って完成させるまでは「動じない」ことです。

侵掠如火(侵掠(しんりゃく)すること火の如く)
企画や提案が通り、仕事としてオファーがもらえる段階になったら、間髪入れず(まさに火の如く)契約に結びつけろ、ということです。クライアントが「良かったね。ありがとう」と気分が高まっているうちに契約してもらえば、後が楽。しばらく経つと「あれから考えてさぁ・・」と余計な仕事が増えることになることが多いからです。

不動如山(動かざること山の如く)
仕事をしていると「あの人可哀そうだなぁ」と思うことがあります。依頼者の中には「お金はないけど、この先何とかするかお願い」と泣きつく人もいます。しかし、そこはプロとして対価が払えない人の依頼は平等に断る必要があります。それは対価を払っている人に対して無礼であるし、この先の単価を下げてしまう原因になるからです。「頑として動かない」ことも時として必要なのです。

実は、孫子の兵法では風林火山というのは抜粋版で、
「故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、難知如陰、不動如山、動如雷霆。」
が全文です。

つまり
難知如陰(知りがたきこと陰の如く)
動如雷霆(動くこと雷霆(らいてい)の如し)
という二つが入って完全版です。

難知如陰(知りがたきこと陰の如く)
「どのような動きが出るかわからない雰囲気は影のように」ということですが、敵味方を作らないようにしましょうということですね。自分は常に中立で誰の支持もしなければ、誰の非難もしない。風見鶏的な中立ではなくて孤高の獅子的な中立です。自分のような仕事をしているときにはこの考え方は非常に大事です。感情的になることも注意しないといけません。仕事は中立で冷静に進めることが大事です。

動如雷霆(動くこと雷霆(らいてい)の如し)
「攻撃の発端は敵の無策、想定外を突いて雷のように敵方を混乱させながら実行されるべき」。依頼者を攻撃するというわけではありません。相手から想定外のところを見せられるように準備することです。「この人こんなことまで知ってるのか?」とか「この人、懐が深いなぁ」とか”敵にするとまずいぞ”と思わせることが大事ということです。

ということを孫子から学びましたが、実践するのはなかなか難しいです。
日本人の私が孫子の話を中国人にするのは不思議な感じがするのですが、聖人君主の考えを理解するのは一筋縄ではいかないというのは全世界共通なのかもしれませんね。

 

 

 

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